ガンの予防に関して

奈良県医師会 鎌田 勝三郎

今や健康食品など、私たちの周りには健康に関する情報であふれかえっています。中でも、ガンの予防に関する情報は、よくビジネスの種になっています。

ガンを予防するには、どうすればよいのでしょうか? この素朴な疑問に一言で回答するには、無理があります。あえてアドバイスするなら、したいことをすることだと申し上げます。ガンに対する体の抵抗力は、ストレスの少ない人で強くなっています。ストレスとは、体の外から受ける、好ましくない刺激と捉えてください。人の世でしたいことをすれば、いろいろと摩擦が生じます。摩擦とは、すなわちストレスです。

〝憎まれっ子、世にはばかる〟は、ある種の真実を突いています。ストレスに強い人と言えば、例えばひどい目にあっている現実を笑い飛ばせるような人、皆さんの周りにも心当たりがあるでしょう。そんな性格の人は、好ましくない刺激ですら好ましい刺激に転換させることが可能なのです。つまり、ストレスそのものを楽しめるのです。「世の中、思い通りにならないからこそ楽しいのだ」と感じられる人は、一般的にガンに対する抵抗力は強いと考えられます。

以上のことを基本に置いた上で、いまさらながら当然のことですが、禁煙、規則正しい生活、適度な運動とともに、飲酒は適量に抑えることが重要です。しかしこれらは大抵の場合、〝したいことをする〟という基本に矛盾します。〝心の欲するところに従いて矩(のり)を超えず〟という状態が理想なのでしょうが、私のような凡人には無理です。やはりバランスをうまくとることを心がけるのが無難でしょう。

禁煙はストレスと考えがちですが、初めから喫煙しない人には全くストレスではありません。たばこや葉巻等には、ニコチンが含まれ、依存症になります。ニコチンの誘惑は一旦はまると、抜け出すことがなかなか難しいものです。

最近は、禁煙治療も保険で受けられる時代となりました。自分ひとりで悩まず、一度医師にご相談ください。

9月はガン制圧月間です。読者の皆さん、人生を精いっぱい楽しんで、充実した生活を心がけてください。