めまいと症状のないメニエール

奈良県医師会 山本 裕幸

メニエール病というと、めまいを思い浮かべる人が多いようですが、メニエール病によるものはめまい全体の約10%です。メニエール病の原因は、内耳(ないじ)を流れるリンパ液の流れが部分的に悪くなり、リンパ水腫(すいしゅ)というリンパ液の水たまりができるためとされています。

最近、耳鼻咽喉科で『めまいのないメニエール病』を診察する回数が増えました。多くは耳鳴りを伴いますが、急に片方の耳がふさがったような感じがしてなかなか治らないというのが主な症状です。平衡感覚の検査でも、体のバランスは正常に保たれていて、めまいの症状はありません。

ところで、急に耳の聞こえが悪くなる病気はいくつかあります。耳の器官の外の方から大まかに見てみますと、まず外耳(がいじ)では、やわらかい粘土のような耳垢(みみあか)が外耳をうめつくしている場合や、耳垢が風呂などで水を吸ってふくれ上がってしまった場合、さらにはその周囲にカビのかたまりが接着剤のようにこびりついている場合などがあります。

中耳(ちゅうじ)では小児、高齢者に多い滲出(しんしゅつ)性中耳炎、また、スポーツやけんかで鼓膜(

こまく)に裂け目ができたり、穴が開いたりする鼓膜穿孔(せんこう)があります。

内耳(ないじ)では、突発性難聴が有名ですが、内耳炎など他の病気との区別が必要になります。

さて、急に聞こえにくくなる『めまい症状のないメニエール病』は、聴力検査で比較的かんたんに診断されます。内耳にある聴覚をつかさどる器官の頂上付近でリンパ液が溜まって低音域だけが聞こえにくくなるために、検査で低音域が難聴となる特徴的なパターンが見つかるからです。

治療は、突発性難聴に準じて行うこともありますし、リンパ水腫の解消のために利尿剤を使用することもあります。発病の原因となるストレス、過労、睡眠不足などを避けることが大切で、睡眠導入剤などを処方することもあります。

耳に異常を感じたら、必ず早めにかかりつけの耳鼻咽喉科を受診してください。