奈良県医師会 川本 浩康
子どもが寝ている時、一時的に5~6秒以上、息が止まることや、呼吸を充分にしていないことに気がついたことはありませんか。いびきをかく、口を開けて寝る、などは要注意です。
鼻で呼吸がしにくくなったり、のどの空間がせまくなると、睡眠中に呼吸が止まったり、いびきをかく原因になります。
鼻で呼吸がしにくくなる、また、のどの空間がせまくなるという原因には、次のようなものがあげられます。
- のどの免疫反応をつかさどるリンパ組織のアデノイドや扁桃(へんとう)という部分が肥大する
- アレルギー性鼻炎、または鼻の副鼻腔(ふくびくう)というところで、細菌感染等により慢性の炎症を起こす副鼻腔炎という病気(ちくのう症)が続く
- 肥満体形である
以上の原因で、質の良い睡眠をしていないと、乳幼児ではやせ形になる、学童以上の年齢では肥満型になるなど、身体の発育が悪くなります。
また、学業の成績にも悪い影響を及ぼすほか、日中に活発な行動をしなくなる、落ち着きがなくなる場合が生じますので、児童生徒の年代では手術や薬剤、生活習慣等により、①から③を改善する必要があります。
さらに、成人で睡眠時に10秒間以上の無呼吸が多い場合には、仕事中の居眠りや運転中の事故などにつながります。
社会保険滋賀病院が行なった調査では、睡眠時無呼吸のある人は睡眠中の呼吸が良好な人に比べて、肥満・高血圧・脂質異常、血糖異常などになりやすいそうです。これらはメタボリック症候群に近い状況であり、注意が必要です。
成人には、手術以外の治療法もあります。
「寝る子は育つ」という言葉は、成人にも通用します。睡眠と栄養と行動は健康の要(かなめ)なので、夜に質の良い睡眠ができる人は、長寿の条件のひとつを満たすことになるのです。
家族の睡眠中に無呼吸があり、ご心配な場合は、耳鼻咽喉科やかかりつけ医に相談されることをおすすめします。