奈良県医師会 勝山 諄亮
起き上がる時にガンガンと強い頭痛が起こる…。
近年、新しく提唱されている「脳脊髄液減少症」による症状かもしれません。
脳や脊髄は硬膜(こうまく)やクモ膜でおおわれ、その内側に満たされている無色透明の髄液の中に浮かんでいます。通常はその圧(髄液圧)は一定に保たれるようにバランスがとれていますが、何らかの原因で髄液がもれることにより髄液圧が下がり、脳が下に引っ張られて、頭痛などの症状があらわれます。
以前は「低髄液圧症候群(ていずいえきあつしょうこうぐん)」とよばれていましたが、調べてみると髄液圧が正常であることが多く、病気の本態(ほんたい)は髄液量の減少であることがわかってきました。そのため「脳脊髄液減少症」という病名が用いられるようになりました。
この病気が注目されるようになったのは、交通事故などによる「むち打ち症」の原因の一つとしてマスコミに取り上げられるようになったことにあります。
髄液がもれる原因は、「むち打ち症」などの外傷や腰椎麻酔(ようついますい)、腰部からの髄液検査、さらには脱水などの全身疾患のこともあります。また、原因不明の場合も多いようです。
主な症状は、頭痛、頸部痛、めまい、耳鳴り、倦怠感(けんたいかん)など様々な症状です。特に、起き上がったときに症状が増強する特徴がみられます。
診断は頭部MRIや、髄液がもれていないかをラジオアイソトープを用いて確認します。
治療は、安静に寝ていることと、点滴も含めた水分補給などの保存的療法があります。それでも改善が見られない例では、髄液がもれている穴を自分の血液で固める「ブラッドパッチ法」が実施されます。