奈良県医師会 久保 良一
アレルギー性鼻炎は鼻の粘膜(ねんまく)の病気で、主な症状としては、発作性で繰り返すくしゃみ、水のような鼻水および鼻詰まりがあり、現れる時期や期間からは通年性と季節性に分けられます。1年を通じて起こる通年性の原因は、主に室内の塵(ちり)やダニですが、複数の花粉が原因であれば、通年性の鼻炎がでることもあります。
季節性は花粉症とも呼ばれ、スギ、ヒノキ科、イネ科やブタクサなど雑草の花粉が原因となります。
近年、スギ花粉による花粉症が大変増加していて、多くの人がその症状に悩んでいます。一般の人でスギ花粉に対するアレルギーがあるかどうか調べたところ、最近では約60%の方に陽性反応が出るとまでいわれています。発症には遺伝の関わりが重要とも言われ、スギ花粉症の有病率は地域差はありますが、平均で25%程となっています。
花粉症が起こるメカニズムはつぎのようなものです。
花粉に対してアレルギーがある人の鼻粘膜に花粉が付くと、マスト細胞と呼ばれている細胞の表面で、膜の免疫抗体(IgE)に花粉が抗原として結合します。そして、化学伝達物質であるヒスタミンやロイコトリエンなどが放出され、これらの物質が、粘膜の知覚神経を刺激してくしゃみが起こり、分泌腺や血管に反応すると、鼻水、鼻詰まりが現れます。
治療には、主にアレルギー反応を抑える抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬および鼻噴霧用(はなふんむよう)ステロイド薬が用いられ、症状と重症度に応じて単独または組み合わせて使用されます。なお、治療効果は、花粉が飛び始める少し前から早めにこれらの薬を服用した方が高いので、花粉情報を参考に主治医と相談してください。
また、花粉回避の対策も重要です。花粉情報を参考に、メガネやマスクの着用、家の中に花粉を持ち込まないために洗濯物を室内で干す、外出時は服や髪を払ってから家に入り、洗顔、うがい、鼻をかむなどを行い、辛い花粉症が少しでも楽になるようにしましょう。
今年は、スギ花粉の飛ぶ量が例年の約2倍、昨年の5~10倍と予想されており、症状が悪化しない十分な対策が必要と思われます。