流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)

奈良県医師会 七浦 高志

流行性耳下腺炎は、ムンプスウィルスの感染により起こる病気です。ウィルスを含む唾液(だえき)が、しぶきとなって空気中に舞う飛沫(ひまつ)感染、または接触感染により起こります。

潜伏(せんぷく)期間は20日前後で、かかりやすいのは2~7歳の子どもです。しかし、子どもの時に感染しなければ、大人になってからでもかかります。

最初に少し熱が出て、そのうち片側または両側の耳たぶの下にある唾液腺、つまり耳下腺が腫(は)れてきます。初めは片側だけでも、2~3日遅れて反対側が腫れてきます(約75%は両側)。そして、この腫れには痛みを伴います。

顎(あご)の下にある顎下腺(がっかせん)や舌下腺(ぜっかせん)も腫れてくるので、耳の下から顎まで腫れて「お多福」のような顔になるため、おたふくかぜとも言います。

耳下腺の腫れは、年少児では4日程度と短く、年齢が高くなるにつれて長くなり、7日間程度続きます。

発熱は、耳下腺の腫れが最大になる頃まで続きますが、その後下がり、痛みが消え、腫れも引いて治ります。

しかし、腫れのピークが過ぎても発熱が続き、さらに頭痛、嘔吐(おうと)などが見られたら、髄膜炎(ずいまくえん)の併発が疑われますので、注意しましょう。しかし、併発しても後遺症は残らず、経過は良好です。

また、思春期以降の人が感染すると、男性は睾丸炎(こうがんえん)、女性は卵巣炎(らんそうえん)を併発することがあります。

睾丸炎は、両側に起こると不妊症になることがありますが、ほとんどは片側だけであり、その頻度は少ないです。

ムンプスウィルスに有効な薬はありませんが、自然治癒するので心配ありません。そして、一度感染すると免疫ができ、二度とかかることはありません。

感染予防として、ムンプスワクチンの予防接種が有効です。任意接種ではありますが、希望される方はかかりつけ医にご相談ください。