奈良県医師会 竹田 洋祐
近頃、異常に汗がでる。 動悸(どうき)がする。食欲があり食事量も増えたがやせてくる。手が震えて字が書きにくい。なんとなく興奮気味で睡眠もとりにくい。周りの人とトラブルを起こしやすくなった。のどの辺りの甲状腺がはれ(甲状腺腫)、眼球が少し大きくなった(眼球突出)ように思える。 また、筋力が衰えた気もする。
これらの症状は、一見とりとめのない症状を並べているように見えますが、甲状腺から過剰なホルモンが生み出され、全身の代謝が過度になる甲状腺機能亢進(こうしん)症いわゆる「バセドウ病」が原因で起こってきます。
もちろん、これらの症状が全て出揃うとは限らず、特に初期には診断が困難なこともありますが、血液中の甲状腺ホルモン量を測ることで診断が確定されます。
一般に女性に多い病気ですが、遺伝的な要因もありますので、血縁の方に甲状腺疾患の方がおられる場合は特に気をつけましょう。
治療は抗(こう)甲状腺薬による薬物療法、手術療法、放射性ヨード療法があります。いずれも亢進した甲状腺機能を抑えます。日本では抗甲状腺薬の内服が第一選択で、その場合は通院で治療できます。治療開始後1~3ヵ月で症状もとれ、通常6ヵ月から2年間ぐらい様子を見ながら薬を減らします。薬の量の調節や副作用がでるかどうかをチェックするために、薬を飲み始める初期のころは、2~4週間に一度くらいの間隔で通院が必要です。治療が長期に渡りますので、通院に便利な近くの医療機関にご相談ください。
まれですが、抗甲状腺薬の副作用から無顆粒球症(むかりゅうきゅうしょう:白血球の顆粒球がなくなる病気)が起こることがあります。抗甲状腺薬治療中に急な高熱が出た時は服薬を中止し、担当医にご相談ください。 また、この病気を治療せずに放置すると、糖尿病の合併や異常行動、心臓への負担が懸念されますので早めの治療をお勧めします。