肺年齢

奈良県医師会 友岡俊夫

私達は、肺が空気中の酸素を体内に取り込み、不要になった二酸化炭素を体外に排出することで呼吸をしています。しかし、肺など呼吸器の疾患があるのに自覚していない人や、治療を受けずに長年放置している人は意外に多いものです。

肺の機能も、20歳をピークに徐々に低下します。そこで最近「肺年齢」という老化度で表し、自分の肺の健康度を自覚してもらおうという動きが広まっています。女性が気になる肌年齢と同様、と言えば身近に感じていただけるでしょうか。肺年齢が実年齢と同じか、若いと判定されることが理想ですが、実際の年齢を超えると、肺の機能が弱っていることが考えられます。

肺の機能は、環境や職業で有害なガスや粉塵(ふんじん)を吸い続けると、低下します。特殊な環境の場合だけでなく、身近なものにタバコがあります。タバコは肺の老化を加速させるため、40歳を過ぎるとCOPDという略語で呼ばれる「慢性閉塞(へいそく)性肺疾患」にかかりやすくなると言われます。

慢性閉塞性肺疾患とは、空気が通る気管支や肺がつまったりする障害のために呼吸がしづらくなる病気のグループで、「肺気腫(はいきしゅ)」や「慢性気管支炎(きかんしえん)」が含まれます。

慢性閉塞性肺疾患はタバコと深く関係する生活習慣病で、患者数は550万人とも言われています。ご本人が喫煙者だったり、家族などまわりに喫煙者がいたりする場合、肺年齢が高くなっているかもしれません。

肺年齢は、スパイロメーターという器械で1秒間に吐く息の量を測定する「スパイロ検査」で調べられます。胸部のレントゲン検査では、早期に発見しにくい呼吸器疾患がある、とも言われています。健康診断や人間ドックの際に、もしくは装置のある呼吸器内科などで、一度、スパイロ検査を受けてみてください。

そして、肺の病気が見つかった時は、かかりつけの医師とも相談しながら、早めに専門の医療機関で適切な治療を受けましょう。