食道静脈瘤

奈良県医師会 髙幣 和郎

石原裕次郎さん、ハナ肇さん、藤問紫さん、河島英五さんという有名人に共通するものと言えば何でしょう? 答は、食道胃静脈瘤(りゅう)から大出血を起こした人達です。

さて、食道胃静脈瘤とは、どんな病気なのでしょうか。

食道胃静脈瘤の原因

腸で吸収された栄養分は血液に混ざり、門脈という血管を通って肝臓に送られ、そこで処理されて自分の体で使えるものに変えられます。しかし、肝硬変では肝臓へ送られるべき血液が滞るために、肝臓の近くの門脈という血管の内圧が高くなります。すると血液は、別の道を通って心臓に戻ろうとします。その道の一つが食道や胃の静脈で、本来細かった血管も流れる血液が多くなると段々と太くなってこぶのようになります。

食道胃静脈瘤の症状

こぶが破裂すると、血を吐いたりお尻から血が出たり(下血=げけつ)したりして、出血多量で死に至ることも少なくありません。肝硬変の代表的な死亡原因のひとつです。

しかし、出血しない限り、自覚症状はありません。突然の吐血や下血で初めて気づくことが多いので、手遅れになる危険があります。肝臓が悪い人は、自覚症状はなくても定期的に内視鏡検査を受けることが大事です。

食道胃静脈瘤の治療

吐血や下血で、静脈瘤の破裂が疑われたらどうしましょう。迷わず救急車を呼んで、内視鏡専門医のいる病院へ運んでもらってください。メスで開腹する手術もありますが、内視鏡による方法が多く用いられています。特殊なゴムでこぶをくくってつぶす方法と、血管内に薬剤を入れて血液が流れないようにする方法があります。

なお、緊急の出血を止血する場合、静脈瘤の再発や再出血をさける場合、胃の静脈瘤破裂で出血量が多く、一時的に止血できても再出血する可能性が高い場合など、症状によって治療法も異なりますので、医師とよく相談してください。

幸い、治療がうまくいった後も、肝臓が良くならない限り門脈圧が上昇する状態は変わらないため、再発する可能性があります。定期的に内視鏡検査を受けてください。

また、食道や胃に静脈瘤ができるような例では、肝臓の機能不全や肝臓がんになる可能性もあるため、肝臓の検査・治療も必要です。