奈良県医師会 櫻井 伸也
今までに胃内視鏡や大腸内視鏡、胃透視(いとうし)や注腸検査を受けられた経験のある人は多いのではないでしょうか。では「小腸の検査を受けた人は?」と言うと、極端に数が減ってしまいます。中には「小腸は検査ができない」、「小腸には癌ができない」と思っている人もおられます。
それらは、小腸が非常に長いことから検査が難しく、胃や大腸に比べると小腸に病変が少なかったからです。小腸は〝暗黒の臓器〟とさえ言われてきました。
しかし、この数年で状況は大きく変わりました。まず自治医科大学消化器内科学の山本教授らによって「ダブルバルーン内視鏡」という検査が開発され、今まで到達することが非常に困難であった小腸を観察することが可能となりました。これは、内視鏡の先端に風船をつけることによって、腸をたぐり寄せて直線化し、深部までの到達を可能としたものです。
その後「シングルバルーン内視鏡」も開発され、小腸は暗黒の臓器ではなくなってきました。ただ、これらの検査は、苦痛を伴い、患者さんの負担が大きく、基本的に入院も必要、といった問題があります。
そこで、より簡単な検査はないのか、ということで注目されているのが「カプセル内視鏡検査」です。これは、直径6mm、長径11mm のカプセルを口から飲み込むことで、小腸の様子を観察できるというものです。
海外では2000年に初めて報告され、翌年には欧米で臨床使用が開始されました。2008年半ばまでに、世界での検査件数は70万件に達しました。しかし日本では、2007年10月にようやく保険適用となったばかりであり、まだまだ認知度の低い検査です。
この検査によって、これまで不明であった小腸について、多くのことが分かってきました。
次回は、この検査の内容や小腸の病気について、もう少し詳しくお話しします。