意外に多い小腸の病気2 ―苦痛のない内視鏡「小腸カプセル内視鏡」―

奈良県医師会 櫻井 伸也

「小腸カプセル内視鏡検査」は、日本では2007年10月に保険適用となったばかりの検査です。

この検査は、おなかの皮膚に信号を受信するセンサーを貼り付け、腰に巻いたレコーダーに記録します。カプセルは、体内に入ってから8時間のあいだ、毎秒2枚ずつ、計約5万5000枚の写真を撮影し、センサーに信号を送り続けます。8時間後、レコーダーに記録されたデータをコンピューター画面で解析し、医師が診断をくだすのです。

さて、実際にこの検査を行ってみると、小腸の病気が意外に多いことに驚かされました。

例えば、関節や腰などの痛み止めに使用される薬によって、胃潰瘍(いかいよう)が発生することはよく知られていますが、小腸にも潰瘍が発生し、時に下血を起こすことも分かりました。また、小さな血管の奇形からも出血が起こることが明らかになりました。これは、今までのバリウムによるX線検査では診断が不可能でした。

さらに、貧血と便潜血検査が陽性であったため、胃と大腸の内視鏡検査を行ったところ異常が見つけられなかった患者さんに対し、カプセル内視鏡検査を行うと、小腸に腫瘍が見つかったという例もありました。

ただし、保険適用でこの検査を受ける場合は「上下部消化管検査を行っても原因不明な消化管出血を伴う小腸疾患の診断」に限定されています。

また、他の胃や大腸の内視鏡検査に比べて、苦痛は少ないのですが、滞留(たいりゅう)と言って、カプセルが体内から排出されない危険性もあるため、対象者も細かく定められています。

原因不明の消化管出血の症状がある人は、一度、かかりつけの医師にご相談ください。

小腸の病気は〝意外に″多いのです。