奈良県医師会 渡邉 真言
心臓は全身に血液を供給する重要な臓器です。その心臓の筋肉に栄養と酸素を送っている血管を冠状動脈と言い、心臓をとりまくように走行しています。
冠状動脈が動脈硬化で狭くなり、心臓の筋肉に十分な血液を送ることができない病気を狭心症と言い、血管が閉塞して心臓の筋肉が死滅してしまう病気を心筋梗塞と言います。狭心症は階段を上ったり、重い物を持ったりしたときに出現する胸痛で、安静にすると改善しますが、心筋梗塞は30分以上持続する突然の胸痛で、突然死の原因にもなります。
では、どのような検査を受ければ冠状動脈が狭くなっている状態を発見できるのでしょうか。簡単な方法では心電図やエコー検査があります。しかし、十分な検査ではないため、従来からカテーテル検査が行われてきました。手や足の動脈からカテーテルという細い管を挿入し、冠状動脈に造影剤を注入して血管を撮影する検査です。しかし、カテーテルを挿入した動脈からの大出血やカテーテルに付着した血の塊が頭に飛んで起こる脳梗塞といった合併症がごくまれに起こります。
ところが、最近マルチスライスCTという機器が開発され、常に動いている心臓を安全かつ簡単に撮影することができるようになりました。マルチスライスCTとは、1回転で複数の断層写真を瞬時に撮影できるCT装置で、非常に高い精度で冠状動脈の狭窄を発見できます。
マルチスライスCTで心臓を撮影する場合、肘(ひじ)の静脈から造影剤を注入し心電図同時記録下に撮影を行います。撮影時間は10秒前後でその間息止めが必要です。検査後すぐに帰宅できます。ただし、検査には造影剤が必要ですので、造影剤アレルギー、喘息(ぜんそく)、腎臓の障害を持っておられる方は検査が受けられない場合があります。
動脈硬化が冠状動脈に起こると狭心症や心筋梗塞を発症し、突然死という最悪の結果を招く場合もあります。最近、胸痛を自覚する方、動脈硬化が心配な方はぜひ心臓のマルチスライスCTを受けていただき心臓病の早期発見、早期治療を行いましょう。