奈良県医師会 中井 義明
のどの異常の一つに声がれがあり、読者の皆さんにも経験のある方が多いと思います。この場合は放置しておいても治ることが多いのですが命にかかわる病気のこともあります。
声がれには、たちの良いのと悪いのとがあり、たちの良いほうの病気には、喉頭炎、声帯ポリープ、声帯結節などがあります。風邪をひいた時やカラオケで絶唱しすぎた後などの声がすれは急性の喉頭炎でのどの痛みを伴います。普段からのどの弱い人は声の使いすぎを避け、うがいを習慣ずけてください。声帯ポリープは声帯に米つぶ大、時には小豆大のできものが生じるものでガラガラ声になります。学校の先生、歌手などふだんから良く声を使う職業の人に多くみられます。初期ならなるべく声を出さないようにしていると軽快しますがそれでも駄目な場合は切除します。
たちの悪いものの代表で、しかも多いのが咽頭がんです。咽頭部は胸、腹の中と異なって見ればすぐわかる場所ですので、声がれが続くときは耳鼻咽喉科の専門医に是非見てもらうことをお勧めします。咽頭がんの場合、声帯にできると声がれが早く出ますが、声門の上部や下部に初発しますと咽頭部に何かものがひっかかる感じが続きます。どちらも進むと痛みが出、よりひどくなると呼吸困難となります。圧倒的に40歳以上の男性に多く、特にたばこを吸う人に多く見られます。最近はファイバースコープが進歩し咽頭を苦痛なく見ることが出来るので早期に発見されることが多く、治療の進歩と共に咽頭がんは咽頭を保存したまま治る時代になっています。しかし、がんが進んでいる場合は首のリンパ節などと共に咽頭全部を取ることになります。この場合、失われた声は人工咽頭や食道発声を練習することにより声を取り戻します。