奈良県医師会 奥村 眞由美
甲状腺(こうじょうせん)は、首の前の「のどぼとけ」の下にある、3~4㎝ぐらいの大きさの器管です。
甲状腺からは、体内の活動を調節する甲状腺ホルモンが分泌され(産み出され)ます。
甲状腺ホルモンは、新陳代謝を活発にして、人が生き生きと活動するためのホルモンです。
甲状腺ホルモンの分泌が進んだときを、「甲状腺機能亢進(こうしん)症」と呼びます。
症状としては、動悸(どうき)、発汗、寝汗(ねあせ)、微熱、イライラ感、のどのかわき、食欲が進む、体重の減少、血圧の上昇、手先のふるえ、脱毛、爪の変形、下痢(げり)をしやすくなること等がみられます。
また、甲状腺全体がはれてくることも、多くあります。心身ともに、興奮傾向になります。
症状をみていると、糖尿病にも似ているように思いますし、また、「心臓病かもしれない」と思うこともあるでしょう。
反対に、甲状腺ホルモンの分泌が低下したときを、「甲状腺機能低下症」と呼びます。
症状としては、脈が遅くなる、体温が低下する、無気力になる、食欲が低下する、便秘がちになる、皮膚がカサカサになる、足がむくむ、気分がふさぎ込みがちになる、うつ状態になる、など、様々なものがあげられます。心身が衰弱傾向となります。
この症状は、更年期障害にも似ています。うつ病になったのかと、考えることもあるでしょう。
このように、甲状腺の病気の症状は多岐にわたっており、特徴的なものはありません。
また、人によって、症状の出方が違い、ゆっくりと進行することが多いようです。
このため、甲状腺の病気は、ほかの病気と間違われる場合や、甲状腺の病気だと気づかれない場合がよくあります。
医師でも、甲状腺の検査をすることなしに、甲状腺の病気だと診断することは困難です。
もし、気になる症状があれば、一度は「甲状腺の病気かもしれない」と思ってみることも大事なことかもしれません。
甲状腺の病気は、ほとんどの場合、適切な治療で症状が改善します。
まずは、かかりつけの医師に相談してみるとよいでしょう。