“ゲートキーパー”ご存じですか?

 5月22日当コーナー掲載の〝5月病〟について、お読みいただけましたか? いわゆる5月病のひとつでもある〝うつ病〟は、「誰にでも起こり得る身近な病気」であるということを、わかっていただけたでしょうか?

 また〝希死念慮(きしねんりょ)〟という言葉は覚えていらっしゃいますか? 事が思うように進まずあせり、ついには自分自身を責めてしまうようになり、「つらい状況から離れたい」→「早く楽になりたい」と気分・気持ちの悪循環を起こすことです。

 つまり、〝死にたいと願う状態〟であり、うつ病の診断項目のひとつでもあります。ただ、うつ病を患ってしまった方に希死念慮が生じてしまっても、まだ自殺を考えている時期であって、実際に自殺という行為に至る危険性はまだ低い病状であります。しかし、高齢者は希死念慮が強く表れることが多く、「消えてしまいたい」という考えに陥りやすいといわれており、特に気を付けなければいけません。

 では一体、皆様の周りにうつ病の方がおられたら、実際どのように関わっていけばよいのでしょうか?

 うつ病の方から希死念慮を突然口にされると、驚いてしまうだけでなく本当にそうなのか疑うかもしれません。しかし、ここで突き放してしまうのではなく冷静になり、向き合って耳をかたむけ良き理解者となってあげれば、その気持ちも変わることさえあります。また、うつ病の方が自らの命を絶ってしまう前にある変化を起こすといわれており、イライラしたり不安感に突然襲われたりします。その後は一変して以前の姿に一見戻ったり、極端な話をすると身の回りを整理し始めたりするようになります。こうなれば、早急に医療機関へ受診させなければなりません。このような前兆を見逃すことなく一刻も早く気付いてあげることが、非常に重要なのです。

 また、誰しも酔っ払うと気持ちが大きくなり、物事の善悪もつかなくなり、自己抑制・コントロールを失います。うつ病の方ももちろん同じで、酔っ払った勢いで自殺してしまう方さえいるほどです。この〝うつ病=アルコール=自殺〟という三つ巴(どもえ)の関係は〝魔の三重奏(トライアングル)〟とも呼ばれており、アルコールは〝自殺の促進剤〟と言っても過言ではありません。さらに自殺がうつ病の一つの症状であることも知っておかなければいけないでしょう。

 このように、身近な人・大切な人などのつらい思いや悩みに、いち早く気付き寄り添い声をかけ話を聞き、そして必要な支援(医療機関など)につなげることが、自殺の危険を察知して未然に防ぐためには欠かせないことなのです。すなわち、いのちの見守りの役割を果たすこのような方がゲートキーパーであり、「いのちの門番」とも言われています。そして、一人でも多くの命を救えるのは、専門性を問うことなく自ら歩み寄って〝ひとりひとりがゲートキーパー役〟として、出来ることから直接関わっていただける読者の皆様なのです。