なぜ日本は長寿国なのか

県医師会    溝上 晴久

 皆さんがご存じのように、日本は長年に渡り世界有数の長寿国となっています。
 2016年の日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳となり、いずれも過去最高を更新しました。男女とも香港に次いで世界2位で、男性は前年の4位から順位を上げました(THE WORLD BANKより)。

 では、なぜ日本人は長寿なのでしょうか?
 その理由はいくつかあります。

  ①医療レベルが高い。

  ②国民皆保険制度で医療費が比較的安く、病院にかかりやすい。

  ③健康意識が高く、人間ドックなどの検診の受診機会が多い。

  ④伝統的な食文化
   ・先進諸国の中で脂肪摂取量が、とび抜けて少ない。
   ・魚介類摂取量が多い。
   ・豆腐や納豆などを含む野菜摂取量が多い。
   ・日本食は種類、調理法(なま、焼く、煮る、蒸す、炒めるなど)が多彩で、栄養バランスに富んでいる。
   ・糖分摂取量が少ない。

  ⑤アルコールに弱い。(アルコールを解毒する酵素の働きが弱い人が多く、それ故にアルコール摂取量が欧米人より少ない)

などが挙げられます。

 果たして今後もこのまま長寿国日本を続けていけるのでしょうか?

 特に食文化に関しては急速に欧米化が進んでいます。1970年代にファーストフード店が日本に上陸し、この頃よりハンバーガー、フライドチキンなどを摂取する機会が増えました。

 それに伴い、魚介類・野菜の摂取量が減少し、10年前からは肉類が魚介類の摂取量を逆転しています。欧米では日本とは逆に肉食中心である食文化の見直しが進み、1人当たりの野菜摂取量は20年前から日本より多くなっています。おそらくこのままでは、数年後には日本の平均寿命ランクは後退していくと考えられます。

 では、日本の平均寿命を上げている都道府県は、どこなのでしょうか?
 以前は、長野県が男女共に1位でしたが、厚生労働省が昨年12月に発表した結果では、女性1位は長野県のままですが、男性1位は滋賀県となりました。
 滋賀県は男性の非喫煙率が全国1位、塩分摂取量は全国平均よりかなり低く、食生活改善などに取り組む活動が他府県より盛んである事などが、男性1位となった理由として挙げられます。

 ここに、日本人の平均寿命をさらに伸ばすためのキーワードが隠されています。

 日本人の男性は先進国平均より喫煙率が高く、塩分摂取量は男女共に先進国の中で一番多いのです。
 今後は日本の伝統的な食文化を大切にしつつ、それに加えて塩分摂取制限を行い、喫煙率を低下させる事が長寿国日本を維持していくのに必要だと考えます。