アクロメガリー(先端巨大症)

県医師会 井上 孝文

 同窓会などで幼なじみと再会し、懐かしい思い出に浸るのは楽しいものです。年の取り方は人それぞれですが、昔と見た目がほとんど変わっていない人もいれば、中には名前を聞かないと誰だかわからないほど外見が変わったという人もいるかもしれません。皆さんは旧友から「顔つきが変わった」と言われたことはありませんか。また、皆さんの周りに「顔つきが変わった」という人はいませんか。

以前と比べて、「顔つきが変わった」「手が大きくなって指輪が入らなくなった」「足が大きくなって靴が入らなくなった」という方は、アクロメガリーという病気が原因かもしれません。アクロメガリーは、脳底部にある「下垂体」にできた腺腫(良性腫瘍)から成長ホルモンが過剰に分泌される病気です。成長ホルモンは骨や軟部組織に作用して体の成長を促す大切なホルモンですが、思春期以降に過剰に分泌されると額やあごが突出したり、鼻や唇・舌などが肥大したり、手足が大きくなったりします。こういった外見の変化は、長い年月をかけて徐々に進行するため本人も家族も気付きにくく、発症してから病気が見つかるまで平均で10年近くかかると言われています。あごが大きくなるとかみ合わせが悪くなることもありますし、舌が肥大するといびきが大きくなったり、睡眠時無呼吸症候群を合併したりすることもあります。外見の変化以外にも、成長ホルモン過剰の状態が続くと高血圧症や糖尿病を合併しやすくなるので、心筋梗塞や脳血管障害のリスクが高くなります。また、大腸ポリープや大腸がんにかかるリスクも高いことが知られています。発汗過多、手足のしびれや関節痛などもよく見られる症状です。さらに、腫瘍が大きくなって脳内を圧迫すると頑固な頭痛が見られたり、視野が狭くなったりすることもあります。

アクロメガリーが疑われたら、診断のために成長ホルモンの過剰分泌を証明する必要があります。まず、血中の成長ホルモン濃度や、成長ホルモンにより分泌が促されるソマトメジンCという物質の血中濃度を測定します。また、糖分を摂取した際に、健常人では成長ホルモンの分泌が減りますが、アクロメガリーでは減らないことがわかっており、この性質を利用して「75gブドウ糖負荷試験」と呼ばれる検査を行い、糖分の摂取後も成長ホルモンの分泌が減らないことを確認します。さらに、脳のMRI検査などを実施して、下垂体に腫瘍があることを確認します。成長ホルモンやソマトメジンCなどの測定は一般の診療所でも実施できますので、まずはかかりつけ医に相談してください。そして、アクロメガリーが疑われたときは、内分泌内科や脳神経外科などの専門医に紹介してもらうと良いでしょう。

この病気を見つけるためには、まず疑うことが大切です。最近では、専門医やその関係機関がアクロメガリーに関する情報をインターネットなどに積極的に提供しています。この病気の諸症状に悩んでいる人が、少しでも早く病気に気付いて適切な治療を受けられるように、より多くの人がこの病気の知識を共有しておくことが重要だと思います。