県医師会 村井孝行
関東圏の大学生を中心に、風しんの大流行が平成24年(報告数2,386人)〜25年(同14,344人)にかけて発生したことを覚えているでしょうか? 平成30年8月頃より東京都・神奈川県・千葉県などで風しん患者が再度急増し、11月28日現在の患者数はすでに2,313人に上り、昨年1年間の患者数(93人)の実に約25倍にも達しており、平成24年の患者数を上回ろうとする勢いです。また、大阪府においても10月頃から風しん患者が増加しだしていることから(99人)、奈良県でも風しんに注意が必要です(7人)。
詳しくみてみると、今回の風しん全患者の96.1%(2,222人)が成人であり、また、男性が81.7%(1,889人)も占めています。公費で受けられる風しんの定期予防接種の機会は、平成2年4月2日以降生まれの男女共に、現在は1歳時と小学校入学する年度内の2回あります。しかし、昭和37年度〜平成元年度生まれの女性と昭和54年度〜平成元年度生まれの男性は1回の定期予防接種の機会しかなく、昭和54年4月1日以前生まれの男性に至っては定期予防接種の機会が全くありませんでした。さらに、予防接種率の上昇に伴い風しん患者が減少しウィルスへの暴露もほぼなくなったこともあいかさなり、十分に風しんに対して抵抗性を持たない成人男性が増えていったことが、今回の流行につながったと考えられます。
風しんは予防接種により、かからないように予防できる疾患(しっかん)です。また、子供から大人の疾患に変わってきていることがお分かりになられたと思います(特に男性は注意してください!)。今まで予防接種を受けていない、或いは受けたかどうかがはっきり分からない方や、風しんに罹(かか)ったかどうかはっきりと分からない方も、予防接種を受けることをお勧めします。たとえ過去に予防接種を受けていたり風しんに罹っていたとしても、再度予防接種を受けることでさらに風しんに対する抵抗性が増すので心配はいりません。
妊婦の方が妊娠初期(妊娠20週頃まで)に風しんに罹ると、心臓・目・耳・精神などに障害を持つ赤ちゃん(先天性風しん症候群)が生まれることがあり、そのため妊娠出産年齢に当たる女性の方には、予防接種を受けることを強くお勧めします。ここで、女性の方が予防接種を受けるに際し、注意しなければならないことがあります。妊娠中の方は、もちろん予防接種を受けることは出来ません。また、確実に妊娠していない時期に予防接種を受けなければならず、その後も2カ月間は必ず避妊しなければなりません(妊娠中の風しんワクチン予防接種で、今のところ赤ちゃんに障害が出たという報告は世界的にはありませんが、理論的にその可能性を全く否定出来ないからです)。
厚生労働省は、平成26年3月に「風しんに関する特定感染症予防指針」を出し、出来るだけ早く“先天性風しん症候群”の発生をなくし、平成32年度までに風しん排除の達成を目標にしています。風しんにかからない・うつさないようにするために、積極的に一人でも多くの方が風しんへの抵抗性がわかる血液検査(抗体検査)と風しんワクチン含有予防接種を受けましょう!(時間が無ければ抗体検査を受けずに、予防接種を直接受けても全く問題はありません)