発達障害

奈良県医師会 竹川 隆

    発達障害は生まれつき脳の一部の機能に障害があります。
大きく3つタイプに分類されます。

1) 自閉症スペクトラム障害

1歳を過ぎた頃から人の目を見る事が少なく、視線を避けようとします。ほかの子供に興味を示しません。保育所や幼稚園に入り集団生活をすると、一人遊びが目立ち、集団行動がうまくできません。 アニメのキャラクターやある動物など自分の好きな事には、毎日何時間でも熱中することもよくみられます。何か決まった事が変更されたり、初めての事は苦手で対応できなかったり、非常に時間がかかります。 思春期になり、自分が人との違いに気づき、また対人関係がうまくいかない事を悩んで、不安症状やうつ症状を合併する場合もあります。就職して仕事で臨機応変に対応できない事や職場での対人関係に悩み、診断される事もあります。 症状の強さにより、さらに分類されますが、本質的には同一の障害と考えられています。スペクトラムとは「連続したもの」という意味です。 発生頻度は100人に1〜2人で、男性は女性より数倍多いとされています。

2) 注意欠如・多動性障害(ADHD)
7歳頃までに、多動性・衝動性か不注意、または両方の症状が現れます。
多動性・衝動性は、座っていても手足を常に動かしている、勝手に席を離れる、じっとしていることができず、常に何かしている、しゃべりすぎる、順番を待つ事ができない、他人の会話に勝手に割り込むなどがみられます。
3〜7%にみられ、男性が女性より数倍多いと報告されています。

3) 学習障害(LD )
全般的な知的な発達には異常が無いのに、読む、書く、聞く、計算など特定なことができないか、難しい状態です。
2〜10%にみられ、男性に多いとされています。

治療について
〇自閉症スペクトラム
幼児期に診断されると、個別や小さな集団で、教育、療育を受ける事により、コミニュケーションの発達、適応力をつけることが期待できます。早期の診断が重要です。
睡眠や行動の問題が大きい場合、不安やうつ症状がでた場合は、精神安定剤、抗鬱薬(こううつやく)などで症状が軽くなる場合があります。しかし両親、配偶者など身近にいる人が、本人の特性を理解する事が最も重要です。

〇注意欠如・多動性障害(ADHD)
薬物療法、生活環境の調整が必要となります。
成人のADHDにも薬物療法が実施されますが、周囲の理解が最も重要となります。
生活環境の調整としては、仕事、勉強に集中が必要な時は、集中を妨げる刺激をなくす事が重要であり、集中する時間は短く、一度にしなければいけない事は少なくし、休む時間はあらかじめ決めておくことなどが効果的とされています。

〇学習障害(LD)
教育的支援が必要となります。親と学校が、子供の困難さを理解し適切な支援の方法について情報を共有することが大切です。
読む事が困難な場合は、字を大きくし、視覚のみでなく文字を指でなぞり触覚の刺激を加えて読む練習をしたり、書く事が困難な場合は、マス目のノートを使ったり、計算が困難な場合は絵を使って視覚化してみるなどの工夫がされています。

おわりに
発達障害について、「自分勝手」「わがまま」などととらえられ、「親の育て方が原因」と親子とも批判されてしまうことが多くみられます。しかし、「親の愛情不足」や「親のしつけが悪い」などの出生後の心的要因は否定されています。
周囲の人が、その人を理解する事が最も大切なことです。

お子さんに気になる症状がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。