献血にご協力ください

奈良県医師会 増井一弘

日本国内では、病気や外傷の治療のために、毎日約3,000人もの患者が輸血を受けています。1-2月は献血キャンペーン期間ですが、この時期、献血者が減少すると言われています。輸血に必要な血液製剤は人工的に合成できず、長期保存も困難なため、年間を通じての献血に協力していただくことが不可欠です。しかし近年、献血の協力者数は減少傾向で、特に10代から30代の若年層の減少傾向が著しく、この10年間で約3割の減少を認め、今後、少子高齢化により更に血液製剤の供給不足を生じることが予想されます。

血液は、赤血球、白血球、血小板の血球成分と、液体成分の血漿に分類されます。献血された血液は、赤血球製剤、血小板製剤、血漿・血漿分画製剤に加工され、それぞれ必要な治療に用いられます。赤血球製剤は、癌・白血病による貧血や消化管出血、外傷や手術の際の出血の際に輸血されますが、有効期間は21日間と比較的短期間しか保存できません。血小板製剤は、血小板数の減少や血小板機能低下による出血傾向を認める際に輸血されますが、有効期間が4日間と非常に短く保存がきかないため、必要時には献血による供給が必要です。血漿製剤は、肝障害や多量出血時により血液を固める凝固因子が減少した際の輸血に使用されるもので、献血血液から赤血球や白血球を除去して精製され、保存期間は約1年と比較的長期に保存可能です。血漿分画製剤は、アルブミン製剤や免疫グロブリン製剤があり、それぞれ出血時の循環血漿量の維持、肝硬変の腹水治療や重症感染症の治療に使用されます。

献血には、血液の全ての成分を献血する全血献血と血液中の血漿や血小板だけを輸血する成分献血があります。現在、献血は16歳以上で200mlの全血献血、18歳以上69歳までで400mlの全血献血や、血小板成分献血、血漿成分献血が可能です。しかし、献血を制限されている方があり、病気の薬によっては献血が出来ない事があります。その他、3日以内に抜歯など出血を伴う歯科治療を受けた方、予防接種後一定期間や海外から帰国後4週間以内は献血が制限されます。

また献血の際には、輸血後の感染症予防のため、梅毒、B型肝炎、C型肝炎、HIV-1、2(AIDS、成人T細胞白血病)の感染症の検査を行っており、輸血による感染のリスクは低下していますが、感染症診断目的の献血は控えてください。

献血は、奈良県赤十字献血センターや近鉄奈良駅ビル献血ルームのほか、各地に運用されている献血バスにて行うことができ、詳細は日本赤十字社ウェブサイトで検索することが出来ます。献血は、身近にあるボランティアですので、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。