スキン・テアとは摩擦やズレなどの外からの力(外力)によって、皮膚が裂けてできる裂傷で、皮膚の表面(表皮)から少し深いところ(真皮)までのキズのことをいいます。療養中の高齢者の手や腕に、赤黒く黒ずんだ皮下出血や薄皮が剥がれ出血しているようなキズを見た時にはスキン・テアだと思って、まず間違いありません。
スキン・テアは外力が加わって発生します。絆創膏を剥がす時、室内で転倒した時、手や腕などがベッドの柵や車椅子などに擦れた時、強く腕などを握ったり引っ張られたりした時、衣服で強く擦れた時、身体を強く拭いた時、痒みのために皮膚を強く掻いた時などに、「皮がずるっと剥ける」ことになります。
超高齢社会の日本では、医療者や介護者がスキン・テアを理解し、予防の取り組みと発生時の正しい手当(ケア)方法の習得が必須です。
スキン・テア発生時には、以下の5点を心がけてください。
①水道水などでキズを洗い流してください。汚れた傷でなければ消毒は必要ありません。
②血が出ていれば止血をします。怖がらずにキズをよく見て、出血点を中心にきれいなガーゼで圧迫します。強く押さえる必要はありません。ほとんどは数分で止血できます。出血の勢いが強く、押さえても血が止まらない時は医療機関を受診しましょう。ただし、心臓病などで「血液さらさら薬」を飲んでいる場合は、血が止まるまでに2倍以上の時間が掛かることもありますので、慌てて医療機関へ行く必要はありません。
③次に、剥がれた皮膚を元の位置に戻します。皮膚が縮んでしまっている場合は、水道水で濡らしながら、皮膚の端をゆっくり元の場所まで引き延ばしてテープで固定します。ピンセットが便利ですが、家庭などでは、綺麗な箸をピンセットの代わりにすることもあります。この操作は、両端、中央、その中間、といったように、何回か分けて少しずつ行います。要点は、表皮の欠けている範囲をできるだけ狭くすることです。
④テープは医療用の皮膚接合用テープが最も適していますが、市販の医療用テープで代用することもできます。その際は、適当な大きさの短冊を作って、キズの線にほぼ垂直に貼っていきます。
⑤ケア方法はそれほど難しくはないですが、我流でやるのは危険です。キズのケアに詳しい医師、看護師、訪問看護師、皮膚排泄ケア認定看護師などの指導を受けてください。
スキン・テア発生後の経過が長いと、剥がれた皮膚が縮んだまま固まってしまいます。こうなると表皮をきれいに戻せなくなり、治癒までの期間が長くなります。きれいに治ることも難しくなります。受傷早期の適切な処置が肝心です。
高齢者の皮膚の乾燥(ドライスキン)は、皮膚を弱くさせ、痒みをもたらし、スキン・テアが起こりやすくなります。皮膚の保湿はとても大切です。塗り薬のヘパリン類似物質やワセリン、その他の油性軟膏、あるいは市販の保湿クリームなどが使われます。ベッド柵や車椅子の突出部などにカバーをつける、腕や下肢をアームカバーやレッグウォーマーで保護する、介護で腕や足を強く握ったまま引っ張ったりしない等の対策と共に、ドライスキン対策も欠かせません。