水虫あれこれ

奈良県医師会 田邉 洋

これから梅雨の時期を迎えます。皮膚科にとっては水虫の患者の増える時期です。この季節に足の指の間や足の裏にじくじくした痒いぶつぶつができると、カビによる水虫がうつってしまったのか、心配ですね。

ここで申し上げておきたいのは、足や手に痒いぶつぶつができてもそれがすべて水虫とは限りません。湿疹やカブレ、できものが足にできても水虫に似た症状になることがあります。また、踵があかぎれの様になって痒くない水虫もあります。それらをきちんと見分けて適切な治療をしていくのが皮膚科です。たかが水虫とバカにしてはいけません。強いかゆみでイライラしたり、我慢して放置して歩けなくなり入院する方もいます。

水虫と呼ばれる皮膚病の多くは白癬という病名で、白癬菌というカビの一種が皮膚の最も外側の角質に寄生して生じます。白癬菌は肉眼では皮膚にいるかどうかは見えないので、皮膚科では病気の皮膚の外側を少し取って、それを顕微鏡で観察して白癬菌を確認します。検査は痛くはありません。白癬と皮膚病と決めるには必ず顕微鏡検査が必要なのです。

治療には、主に塗り薬を使用します。水虫と思っても異なる皮膚病のことがあり、それぞれ効く薬も異なるため、検査をしてどの薬が効く皮膚病なのか見分ける必要があります。白癬にはカビを殺す塗り薬が効きます。水虫に似ていても湿疹やかぶれの場合はステロイドの塗り薬を使います。

よく水虫の薬を発見すればノーベル賞といわれましたが、今は強力な水虫の塗り薬は町の薬局でも売っています。それを塗っても水虫は治りにくいといわれますが、それは別の皮膚病と水虫とを見分けずに薬を塗っているからです。別の皮膚病に水虫の薬を塗っても効くはずがありませんね。

水虫は日本のジメジメした梅雨時に長い時間靴を履くとなりやすいといわれます。日常の注意としては、外出して帰ったら濡れタオルで足の裏を拭かれることをお勧めします。白癬菌は温かく湿度の高いところを好みます。長時間靴を履くお仕事の方は水虫になりやすいので、1日中靴を履きっぱなしにせず、靴をサンダルに履き替えたり裸足になって風通しするとよいでしょう。家族に水虫の人がいると家中のあちこちに菌がいます。足ふきマットや洗濯を家族ごとに分ける必要はありません。それよりも水虫の人は皮膚科に受診して3か月程度薬を塗ってきちんと治すことが大切です。そうすると家の中にいた菌も減ります。

最近心配なのは、ペットブームを背景に、犬や猫のペットから人にうつる水虫や、逆に人の水虫がペットにうつることがあります。これらは足よりも体や頭に出ることがあり、他の皮膚病と間違いやすく治療も飲み薬が必要な場合があります。水虫で困られる方はぜひ皮膚科に受診されて正しい治療を受けてください。