新型タバコに注意

奈良県医師会 溝上晴久

近年、日本での喫煙者数は、タバコの有害性に対する知識の広まりや健康志向などから、年々減少傾向にあります。しかし先進国の中では、喫煙率がまだまだ高いのが現状です。
最近では¨紙巻タバコより有害性が低い¨というふれこみで様々な新型タバコが出てきており、これが喫煙者数減少の妨げとなってきています。
果たして、新型タバコは本当に健康被害が少ないのでしょうか?

新型タバコには、「加熱式タバコ」と「電子タバコ」の2つがあります。加熱式タバコは従来の燃焼式タバコとは異なり、葉タバコを加熱する事によりニコチンを含むエアロゾル(霧状)を発生させて吸引する方式です。
電子タバコは、液体を加熱してエアロゾル(霧状)を発生させて吸引する方式です。
現在、日本での新型タバコの主流は加熱式タバコです。国内で販売されている加熱式タバコは、今年5月から1つ増え4銘柄となりました。その中の1つは、約90%の有害物資がカットされていると広告を出しているものもあります。しかし、それはタバコの400種類以上ある有害物質中の世界保健機関(WHO)が優先する9つの有害成分にのみ限定したデータであり、ニコチンやタールはしっかり含まれています。確かに、有害物質の総量では紙巻たばこより少ないかも知れませんが、タールの一部であるアセナフテンなどは、むしろ紙巻タバコの約3倍量の含有量となっています。ちなみに、発売国では「有害性は従来の紙巻タバコより低い事は確かだが、使用によってもタバコ関連疾患のリスクが下がるとはいえない」として、つい最近まで販売許可されていませんでした。

もう一つの新型タバコである電子タバコに関しては、加熱式タバコ以上に不明な点が多く、加熱する液体には有害性香料が含まれている場合が多く、ニコチンを含んだものもあります。本来はニコチンを含んだものは薬事法で規制されていますが、電子タバコは海外からのネット販売が主流のため規制出来ません。一般的には禁煙補助薬のイメージが強い電子タバコですが、その安全性には疑問符が付きます。
「加熱式タバコ」「電子タバコ」のどちらも煙が出ないため、従来の紙巻タバコのように目に見える副流煙はありません。そのため、周囲の人への被害がないと思われがちです。しかし、喫煙者が吐き出す呼気には、紙巻タバコと同様量のニコチンが含まれている場合もあります。当然ニコチン以外の有害物質も呼気には含まれており、受動喫煙がしっかり確認されています。
新型タバコは紙巻タバコより有害物質がやや軽減されている可能性はありますが、やはり健康被害がある事には違いありません。禁煙補助薬としても十分ではなく、むしろ完全禁煙の妨げとなっています。

健康被害から逃れるため新型タバコに切り替えた方、また今後切り替えようと思っている方は、是非完全禁煙する事をお勧めします。