胆のう結石は経過を見ましよう

奈良県医師会 久保良一

肝臓で作られた胆汁は、肝臓の中の胆管に集められ、そして総胆管と言われる管を介して十二指腸に排出されます。右上腹部にある胆のうは、消化を助ける胆汁を濃縮し、貯蔵する袋状の消化器の臓器です。胆汁に含まれるコレステロールや胆汁色素が胆のう内で結晶となり、さらに石のように固まって大きくなると結石と言われます。結石が出来る部位により『肝内結石』『総胆管結石』『胆のう結石』に分類され、その約80%が『胆のう結石』です。俗に『胆石』と言えば、胆のう結石を指します。今回は胆石についてお話しします。

本邦での胆石の保有率は人口の約10%で、食生活の欧米化で増加する傾向にあるほか、加齢と共に増加し、50歳から60歳代の中年で肥満傾向の女性に多いと言われています。胆石が出来てしまう原因として食事の影響があり、特に高脂肪食の過剰摂取が問題とされています。糖尿病、脂質異常症、脂肪肝などが危険因子で、アルコールや総力ロリーの取り過ぎが影響し、さらに胆のう収縮機能が弱い人にも出来やすいと言われています。

胆石の大きさは砂粒ぐらいから小石大と色々で、数も1個から無数で、胆のうに充満していることもあります。また胆石の成分により、大きく分けて『コレステロール結石』と『色素結石』に分類されます。

胆石の50~70%は症状のない無症状性ですが、急に悪化すると胆石発作や急性胆のう炎が起こります。

胆石発作は主に突然、右上腹部に激痛が起こり、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)を伴うことがあります。胆石が胆のう出入口の胆のう管に詰まるために起こると言われており、油ものを食べた後に起こる事が多いです。

胆石が原因で胆のう内に炎症や細菌感染が起こると、 急性胆のう炎や胆管炎となり、腹痛、発熱、黄疸(おうだん)を併発します。重症化すると腹膜炎や急性閉塞性化膿性胆管炎になり、さらに敗血症で血圧低下や意識障害が起こると、救命処置をしても亡くなることがある怖い病気です。

胆石は、ほとんどは腹部エコーで見つかります。診断が難しい時にはCTやMRI検査が必要になるほか、胄カメラを使った内視鏡工コーや内視鏡的逆行性胆道膵管造影を行うこともあります。胆石の人は多いですが、症状が無いからと放置しないでください。肝機能障害や胆石による胆のうがん発生リスクを考えて、定期的な経過観察をお勧めします。

胆石の治療は、無症状の場合は基本的に経過観察ですが、症状がある場合や胆石の形態に応じて、①外科的手術、②内服薬により胆石を溶かす方法、③体の外から衝撃波をあてて結石を砕き粉々にして胆のうの外に流し出す方法があります(③は現在ではほとんど行われなくなっています)。

症状がある胆石に対する基本治療は、外科的手術(胆のう摘出術)で、腹腔鏡(内視鏡)手術と開腹手術があります。胆のう以外の胆管結石の有無、炎症の程度、過去の開腹手術の有無、心肺機能などにより手術方法を検討しますが、 最近では技術が飛躍的に進歩していることに加えて、手術の傷跡が小さく術後の回復も早いため、主に腹腔鏡による手術が行われています。ただ欠点もありますので、手術の際には腹部外科専門医とよく相談してください。

無症状性胆石の痛みが出る確率は年に1~2%で、半数~8割の人は無症状のままだと言われています。だだし無症状性胆石のなかでも、胆のう内に結石が充満したり、胆のうの萎縮や変形が強かったり、胆のうがんが完全に否定できない場合には、予防的に胆のう摘出が必要なこともあります。

繰り返しますが、胆石をお持ちの人は放置せず、かかりつけ医と治療方針をよく相談してください。また無症状性胆石と胆のうがん発生の関連性も完全に否定されていないほか、胆石の大きさを継続的に見るためにも年1~2回のエコー検査を受けることをお勧めします。