緑内障

奈良県医師会 大萩豊

 緑内障は白内障とならんで有名な目の病気です。白内障では目の中の水晶体が濁ってくるのに対して、緑内障では徐々に視野が狭くなります。緑内障は40歳代以上の中高年に多く、岐阜県多治見市の住民を対象にした調査では、40歳以上の人の5%に緑内障が見られました。この調査で初めて緑内障が発見された人は89%で、多くの方が緑内障と気付かずに治療を受けていません。推定では国内の患者数は465万人といわれています。

そこで実際に、眼科に緑内障で通院されている方の受診のきっかけを調べてみました。するとアレルギーや老眼など、他の症状で受診された際に発見された方が最も多いことがわかりました。次に健診や人間ドックで指摘されて受診される場合が多く、視野が狭いと感じている人は少数です。

初めて緑内障と診断されると、多くの方はショックを受けます。緑内障のイメージとして「治らない」「見えなくなる」など悪いイメージがあるからです。確かに緑内障で視野が狭くなってしまうと、回復することは困難です。一方で初期の緑内障では自覚症状はありません。緑内障と診断されてからは眼科に通院して、毎日目薬をするけれども、進行するまで特に日常生活には困らないことが多いものです。

ちなみに緑内障という名前の由来については諸説あります。古代ギリシャのヒポクラテスが「目が地中海の海のように青くなり、やがて失明状態になる」と記述している説。急性の緑内障で眼圧が急激に上がると、黒目の角膜が濁る色が緑っぽく見えるという説があります。

こちらの急性緑内障発作では、はっきりした症状が現れます。目の痛みやかすみ以外に頭痛、吐き気があれば、早めに眼科を受診してください。発作が起きるのは夜が多く、うつ伏せの姿勢やかぜ薬などを飲んだときに起きやすくなります。

そもそもどうして眼圧が高くなるかというと、目の中では「房水」という液体が循環しています。その出口である隅角で流れが悪くなり、眼圧が高くなるのです。その結果、視神経の縁が薄くなって、視野が狭くなります。急性緑内障発作はこの隅角が狭い人に起こります。

多くの緑内障は眼圧が正常範囲の正常眼圧緑内障です。視野検査で視野の欠損が確認されれば、緑内障とほぼ確定されます。また近年は新しい検査機器によって、早期診断できることが増えてきました。

OCT(光干渉断層計)では近赤外線レーザーを用いて、眼底の視神経乳頭の周囲の網膜の厚みを正確に測定します。この検査で視野に異常がない時期にも、眼底には緑内障の変化がすでに起こっていることが分かりました。

2017年に改訂された緑内障診療ガイドラインでは「前視野緑内障」という病名が追記されました。これはOCT検査の普及により、視野に異常がない早期の緑内障(=前視野緑内障)が発見されるようになったためです。

すべての前視野緑内障に治療が必要なわけではありませんが、将来進行すると予想される場合は早期治療を行います。

中途失明の原因として、かつては糖尿病網膜症が1位でしたが、2002年から緑内障が1位になっています。他に緑内障の原因としては、ステロイド薬の副作用によるもの、ぶどう膜炎など炎症によるもの、進行した糖尿病網膜症に伴う血管新生緑内障、生まれつきのものなど多岐にわたります。

緑内障の初期には自覚症状がないことが多く、40歳をすぎたら一度検査を受けることをおすすめします。