つつが虫病(後編)

奈良県医師会 岩井 務

 

つつが虫病の症状は発熱(38~40℃の高熱)、発疹、ツツガムシ幼虫の刺し口の3つが主な特徴です。つつが虫病の病原体(リケッチア)を持ったツツガムシ幼虫に刺されて5~14日頃、38~40℃の高熱ではじまり、全身倦怠、悪寒(寒気)、頭痛、のどの痛み、関節痛、食欲不振などの「風邪様症状」を伴います。

熱が出てから2~5日頃にほぼ全身にわたって粟粒大から小豆大の赤い発疹があらわれ、ツツガムシの幼虫に刺された部位(刺し口)の近くのリンパ節が腫れてきます。刺し口は、はじめ紅色丘疹(赤い直径1cm以下の皮膚の隆起)から水泡(皮膚の水ぶくれ)、続いて膿疱(皮膚の水ぶくれの内容物が膿の集合体)となり、発熱6日目頃には中央部が黒色痂皮(黒いかさぶた)状になります。刺し口の大きさは1cm前後で、皮膚の柔らかい隠れた部分に多いため、全身くまなく探すと刺し口が見つかります。

つつが虫病は、ペニシリン系やセフェム系抗生物質が無効であります。肝機能異常、CRP(炎症反応)強陽性、白血球数減少、血小板数減少などの血液検査成績を示します。つつが虫病は適切な治療がなされないと心不全、腎不全、肝不全、肺水腫、肺炎、脳炎などの重篤な状態となり、死に至る場合があります。

しかし、テトラサイクリン系抗生物質が有効で、早期に治療すれば完全に治るため、必要以上に恐れることはありません。通常、投薬後2~3日で熱が下がり、回復に向かいます。つつが虫病の病原診断としては、血液中の抗体検査(IgG、IgM)と病原体遺伝子検査(PCR)が行われています。

ツツガムシは田畑、山林、ヤブ、河川敷、草原などに生息しています。農作業、山菜採り、ハイキングなどでこのような場所に立ち入る際には、次のような予防対策をしましょう。

 

➊長袖、長ズボン、長靴、手袋等を着用し、素肌をできるだけ露出しないこと

➋休息するときはなるべく裸地を選び、草むらに直接すわったりしないこと

➌ダニ忌避剤、防虫剤を衣服に散布すること

➍立ち入ったあとは入浴し、吸着したツツガムシ幼虫を洗い流すこと

 

もっとも大切なことは、ツツガムシの生息していそうな場所に立ち入ってから5~14日後に発熱した時には、まずつつが虫病を疑い、すぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。