子どもの頭部打撲について

奈良県医師会 道野 博史

今回は、子どもの外傷で患者さんから質問の多い頭部打撲についてお話しします。

乳幼児は、体の割に頭が大きいので、転んだときに手で受け身をしにくく頭を打ちやすいこと、また、大人と比べて頭自体がやわらかく、骨折や出血を起こしにくいため、大人よりは衝撃に強いことが特徴です。ただし、頭にかかる力の度合いによっては、頭蓋内出血や脳挫傷など重篤な経過を取ることがあり、受傷時の状況とその経過を把握しておくことが重要です。

まず、注意する点としては、受傷時にすぐ泣く等の反応があったか確認してください。反応があるということは脳しんとうなど重篤な意識障害がでていなかった目安となります。

つぎに必要なのは、頭を打った後の経過を観察することです。機嫌がよく、元気に遊んでいるか、周囲への注意や関心が十分あるなど、普段どおりの行動をしているかを注意してください。

また、受傷直後から6時間までに何らかの症状が出る頻度が一番多く、ついで24時間以内に発症することが大部分と言われています。少なくとも受傷後1日は安静にして観察してください。

経過観察中に注意すべき主な症状をあげます。意識が戻らずぐったりしている、けいれんやひきつけが起こる、元気がなくぼんやりしてすぐに眠ってしまう、 吐き気やおう吐が何回も起こる、ぶつけた所と違う部分の頭痛を訴える、会話の内容が混乱する、片側の手足の動きが明らかに悪い、しびれを訴える等です。

また、上記症状が次第に悪化するなどの変化があれば、頭部に深刻な病態が出現している可能性があります。その場合は安静にして、すぐに脳外科のある医療機関へ運ぶ必要があります。

最後に、子どもが頭部外傷を負った際は、状態が普段と違わないか冷静に観察することが重要です。

また、けがの度合い、状況によっては、この指針があてはまらないケースもあります。何か不審な徴候があれば、すぐに医師に相談し、診察をうけてください。