奈良県医師会 竹内 大志
肺炎球菌は、ヘモフィルスインフルエンザ菌b型(ヒブ)と並んで、子どもの細菌性髄膜炎、菌血症、肺炎、中耳炎等を引き起こす代表的な菌です。肺炎球菌感染症は命にかかわり、世界では毎年約100万人の乳幼児が死亡しています。細菌性髄膜炎は早期診断が難しく、さらに治療に使う抗菌薬に耐性(抵抗力)を持つ肺炎球菌が増加しているため、ワクチンによる予防が重要です。
今年の2月から日本でも認可された小児の肺炎球菌ワクチンは、約90種類もある肺炎球菌の血清の型から、小児が肺炎球菌感染症を引き起こすことが多い7種を選んでワクチンにしたものです。すでに使用されている成人用の肺炎球菌ワクチンと異なり、免疫力が未熟な2歳未満の子どもでも十分な免疫がつくように開発されました。
海外の国々では、すでに標準的に接種されています。例えば、約10年前から小児期の定期接種に導入した米国では、5歳未満の子どもがかかる割合が導入前と比べて98%も減少したと報告されています。さらに、小児に接種をしたことで間接的な予防効果が高まり、このワクチンを接種していない高齢者の肺炎球菌感染症が65%も減少したとのことです。
接種を受ける時期や回数ですが、標準的には生後2ヵ月以上7ヵ月未満のときに初回免疫を開始して、27日間以上の間隔をあけながら2回接種、ここまでで合計3回です。また、追加免疫として生後12~15ヵ月の間に1回接種し、合計4回の接種となります。
なお、この標準的な時期に接種できなかったときは、年齢等により接種回数も異なりますので、かかりつけの医師のご相談ください。
現在、小児の肺炎球菌ワクチンは任意接種で、1回に1万円前後がかかります。こどもたちの命を守るため、このワクチンがより多くの小児に接種できるよう、市町村などが実施する定期の予防接種に組み込まれるなど公的な援助が期待されます。