臓器移植法が改正されました

奈良県医師会 鹿子木 英毅

今年7月に臓器移植法が改正されました。これまでは、本人の同意が書面で示された場合にしか臓器の提供が認められていませんでしたが、改正により、本人の意思が不明であっても、遺族が同意すれば臓器提供が可能となりました。また、以前には認められていなかった15歳未満の方からの臓器提供も家族の同意があれば可能となっています。

臓器移植とは、臓器の働きが低下し、他の方法では改善の見込みがない状態の人に、他人の臓器を置き換える治療法です。健康な人から臓器の一部を摘出して提供を受ける「生体移植」と、脳死状態の方から提供を受ける「脳死移植」、心停止後の死体から臓器を摘出する「心臓死移植」があります。しかし、「生体移植」は肝臓や腎臓といった特定の臓器にしか応用できないうえに、健康な人を傷つけて臓器を摘出するという倫理的な問題があります。また、肝臓や心臓は、脳死状態で摘出しないと移植後に十分機能しないとされています。

今の日本では、脳死状態からの臓器移植は一般的な医療とは言えません。前提となる脳死判定には死や宗教に対する考え方の違いもあり、様々な問題が指摘されています。それでも「脳死移植」でしか救えない命があることもまぎれもない事実です。

臓器移植法が施行された1997年から昨年までの間に国内で行われた脳死状態からの臓器提供はわずか80例余りで、欧米諸国だけでなく、アジアの国々と比べても大きく遅れていると言わざるを得ませんでした。ところが今回の法改正後、約2ヵ月半の間に10例の脳死下での臓器提供が行われ、少しずつ状況は好転しています。

病気と戦いながら移植を受けられる日を待っている命を少しでも多く救うためには、臓器移植という医療をもっと多くの人に知ってもらう必要があります。

臓器を提供する意思を示す方法の一つに、臓器提供意思表示カードがあります。このカードでは、臓器を提供しないという意思表示も可能です。市町村役場や保健所、運転免許センターやコンビニエンスストア等で手に入れることができますので、ぜひ一度手に取って臓器移植について考えるきっかけにしてみてください。