奈良県医師会 石井 禎暢
アルコール性肝障害とは、飲酒により肝臓の障害が生じることです。最近、アルコールの消費量の増加に伴い、アルコール性肝障害も増加しています。全肝臓疾患の中でアルコール性肝障害は1割とも言われています。
主に以下の4つに分類されます。
(1)アルコール性脂肪肝
比較的少ない飲酒量でも発症します。自覚症状はほとんどなく、あっても体がだるい程度。血液検査で軽度の異常が見られることが約半数です。
(2)アルコール性肝線維症
症状は、体がだるい程度で、血液検査では、異常値が見られることが脂肪肝より少し多いです。
(3)アルコール性肝炎
大酒家がいつも以上に飲酒したのをきっかけに発症し、急激に肝臓の細胞が壊死(えし)を起こします。腹痛、黄疸(おうだん)、発熱、脳症(のうしょう)がみられ、重症型では多臓器不全で約40%が死亡します。
(4)アルコール性肝硬変
ウイルス性などの他の原因による肝硬変より、全身のだるさや食欲不振、下痢、肝臓腫大、くも状血管拡張などがみられることが多いです。
アルコール性肝障害の治療は、どの病型も断酒につきます。しかし、なかなか断酒は困難と思われます。肝障害をきたすアルコールの危険量は、男性では日本酒にして1日6合、安全量は3合と言われていますが、これでも多いと思われます。1日1合が理想ですが、飲酒量の多い人も少ない人も、とにかく1週間に数回の「休肝日」を取りましょう。
お酒に強い人ほどアルコール性肝炎やアルコール性肝硬変には注意が必要です。特に、アルコール性肝炎は突然発症し、現在でもまだ死亡率が高い疾患です。おいしいお酒を長く飲めるように、日頃の飲み方には注意をしましょう。