脂肪肝から肝臓がん?

奈良県医師会 石井 禎暢

脂肪肝は、国民の3人に1人にかかっていると言われる生活習慣病の一つです。最近では、脂肪肝と診断される人が急速に増えており、成人男性の10%、女性の3%にみられます。

日本人は、別名「節約遺伝子」とも呼ばれる、脂肪を蓄積しやすい遺伝子の素因を持っているとされています。

肝臓は、「沈黙の臓器」と言われ、体調の悪化を自覚したときはすでに手遅れの場合もあります。脂肪肝は、進行すると「疲れやすい・体がだるい・食欲がない」といった肝臓病の一般的症状があらわれます。

脂肪肝の主な原因は「肥満」「アルコール」「糖尿病」の3つで、最近では、アルコール性脂肪肝が減少傾向にあるなかで、むしろ警戒が必要とされているのが、「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」なのです。非アルコール性脂肪肝の原因は、脂肪分や糖分の多いバランスを欠いた食生活や運動不足による内臓脂肪の増加で、この病気が恐ろしいのは、進行した場合「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」と呼ばれる病気に進む可能性があることです。

非アルコール性脂肪性肝炎の一割程度は進行し、数年以内に肝硬変や肝臓癌になるとされています。

また、やせていれば安心ということでもありません。太っていない人の5人に1人が脂肪肝であったという調査結果もあります。

健康診断の血液検査で、GOTやGPT、γ―GTPといった項目がありますが、特にGPTが上昇しているときは要注意です。また、脂肪肝の診断は超音波検査(エコー検査)で比較的簡単に行えます。

脂肪肝はほとんどの場合、自覚症状がありません。定期的に健康診断を受け、脂肪肝と言われたら、かかりつけ医に相談して生活習慣の改善を行い、必要に応じて治療を受けることをお勧めします。