奈良県医師会 石塚 理香
私が子供の頃は、帰宅時の手洗いや、風邪の時のマスク着用を口うるさく言われたので、ごく自然に衛生観念が身についたように思います。
昔は感染症が死因の上位だったので、国も公衆衛生教育を推進し、感染症=死という恐怖心から、国民もできる限り予防しようという意識を強く持っていたからでしょう。
ところが現在は、医療の進歩で感染症は治療できるという概念が強くなり、予防という非常に大切なことを忘れがちです。近年、SARS、鳥インフルエンザ、今回のA型H1N1(新型)インフルエンザというように、新しい感染症が問題になります。今回は幸いにも季節性インフルエンザ治療薬が効きますが、未知の感染症には治療薬がないと考え、初心に帰って感染症の予防法を身につけ直すことが重要です。
まずは、病原微生物を洗い落とす約30秒の手洗いの手順を紹介します。①流水で手を濡らし、石鹸を手に取る。②石鹸をよく泡立て手のひらを洗う。③左右とも、手のひらで反対の手の甲を包むように洗う。④指を組むようにして、指の間もよく洗う。⑤親指を反対の手で握るようにして洗う。⑥指先と爪を反対の手のひらにこすりつけるようにして洗う。⑦手首も洗う。⑧流水で石鹸を洗い流し、ペーパータオルや清潔なタオル(できれば個人用)でふく。
つぎに、個人が使用するマスクで最適なのは、不織布製のマスクです。咳やくしゃみでうつる感染症の場合、「発症した人がマスクを着用するのは必須」と言えます。まだ感染していない人のマスクも、正しく着用すれば一定の効果はあると考えられます。マスクを使用する際の注意点は、以下のとおりです。
- 顔のサイズに合ったマスクを購入する。
- 鼻部の金具を調整して、マスクを顔にフィットさせる。
- 使用後のマスクは、ビニールなどで密閉して捨てる。
- 着用中も、マスクを触った手で口・鼻・目などを触らないように注意し、マスクを触ったあとは手を洗う。
このほか、バランスのよい食事、十分な休養、規則的な生活で、日頃から抵抗力を高めておくことや、色々な感染症の予防接種を受けておくこと、また、持病のある人は治療をきちんと受けておくことも大切です。