奈良県医師会 鹿子木 英毅
乳がんは、胃がん、大腸がんとともに、日本人女性が最もかかりやすいがんのひとつです。日本では毎年4万人以上の方が新しく乳がんと診断されており、その数は年々増加しています。
乳がんの患者数は30歳代から増え始め、50歳前後でピークを迎え、その後は年齢とともに減少するとされていましたが、最近は高齢者の乳がんも増加傾向にあります。
乳がんの発生には女性ホルモンが深く関わっていて、初経が早い人、閉経が遅い人、出産経験のない人、更年期障害に対してホルモン補充療法を行った人は乳がんの危険性が高くなると考えられています。
乳がんの症状としては、しこりに気づくこと以外に、皮膚のくぼみや色の変化、乳首の先から血の混じった分泌物が出ること、乳房の痛みなどがあります。しかし、最近では自覚症状がなく、検診で見つかる人の割合が増えてきています。
乳がん検診は、40歳以上の女性を対象に、2年に1回、問診、視触診(ししょくしん)に、マンモグラフィというレントゲン検査を組み合わせて行われています。マンモグラフィは、専用の装置で乳房をはさんで圧迫し、X線撮影をする検査で、触診では見つからない小さながんを見つけることができます。
2年ごとの定期検診以外に、自己検診も乳がんの早期発見に効果的です。自己検診のやり方は、まず鏡の前で乳房の形、色、ひきつれやくぼみの有無を観察します。次に乳房に触れてしこりを探しますが、この時につまんだり押したりするよりも、表面を指でくまなく滑らせるようにした方がよくわかります。
こうした自己検診を、できれば月一回は行ってください。乳房にできるしこり全てが、がんとは限りません。おかしいなと感じたら、一人で悩まず、速やかに乳腺(にゅうせん)専門医の診察を受けましょう。
欧米では、近年、乳がんの死亡率が低下していますが、日本ではいまだに上昇を続けています。その原因のひとつに、乳がん検診の受診率が低いことが挙げられています。アメリカでの受診率が70%以上に達するのに対し、日本ではわずかに15%程度しかありません。他のがんと同様に、乳がんも早期に発見できた場合は、完治する確率が高いと言えます。
40歳を過ぎたら、乳がん検診を受けましょう。