奈良県医師会 増田大徳
日本は今や世界でも有数の「長寿国」となりました。医療の進歩や生活環境の改善により、人生100年時代が現実のものとなりつつあります。
しかし、「長く生きること」が必ずしも「元気に生きること」とは限りません。年齢を重ねる中で、いかに健康を維持し、自立した生活を送るか──それが今後ますます重要になっていきます。
その中で見過ごされがちですが、私たちの健康寿命に大きな影響を及ぼすのが「慢性腎臓病(CKD)」です。CKDとは、腎臓の働きが徐々に低下していく病気で、血液中の老廃物や余分な水分を排出する機能が少しずつ損なわれていきます。初期の段階では症状がほとんどないため、多くの人が気づかないうちに進行してしまう「サイレントディジーズ(沈黙の病)」と呼ばれています。
現在、日本では「成人のおよそ8人に1人がCKDの疑いがある」とされており、その多くが高齢者です。糖尿病や高血圧といった生活習慣病が主な原因とされ、こうした病気を持つ方は腎臓にも注意が必要です。
さらにCKDが進行すると、腎不全に陥り、人工透析や腎移植が必要になることもあります。透析は生活の質を大きく制限し、精神的・身体的な負担も増大します。
CKDの予防と早期発見のためには、まず「自分の腎臓の状態を知ること」が重要です。健康診断では尿検査や血液検査を通して、腎機能の異常を早期に発見することが可能です。特に「尿たんぱく」や「血清クレアチニン」、「eGFR(推算糸球体濾過(ろか)量)」といった数値に注目しましょう。
また、日常生活において以下のような点を心がけることで、CKDの予防につながります。
- 減塩を意識した食事:1日6g未満を目安にし、味付けは控えめに。
- 適度な運動:毎日のウォーキングや体操など、無理なく続けられる運動を。
- 禁煙・節酒:タバコや過度な飲酒は腎臓にも悪影響を及ぼします。
- 水分補給を忘れずに:脱水は腎臓に負担をかけるため、特に高齢者は注意が必要です。
- 定期的な健康診断:少なくとも年に一度は検査を受け、自分の健康状態をチェックしましょう。
高齢になっても元気に、自分らしい生活を送り続けるためには、腎臓の健康を守ることがとても大切です。家族や周囲の方とも一緒に、生活習慣を見直し、腎臓病予防に取り組んでみてはいかがでしょうか。



