グリップエンドの痛み
手の平、小指 疲労骨折かも
奈良県医師会 瀬戸靖史
(せと整形外科たわらもと)
有鉤骨(ゆうこうこつ)は、手首の関節にある8つの小骨の1つで、“ 鉤 ”は、カギ、フックを意味します。
手の平の付け根の小指側、母指と小指の延長線上付近にあり、手の平側に突き出した突起(有鉤骨鉤)を持ちます。この突起部に小指、薬指を曲げる腱が掛かり、腱の走行方向を変える滑車の役割を果たしています。また、それ以外にも多くの靭帯(じんたい)、筋肉の付着部になっていて、力学的負荷が多く掛かっています。
骨折は、転倒して手を突いてしまった時や、ゴルフスイング時に地面を叩(たた)いてしまった時など、手の平に強い衝撃が掛かった時に生じます。また、骨の突起部がちょうどグリップエンドにあるので、繰り返しのバットスイングやテニスの練習で疲労骨折を起こすこともあります。
骨折の症状は、「手の平、小指側が痛み、押さえると痛みがある」「物を握ると痛い、握りにくい(握力の低下)」「特に小指、薬指を曲げると痛みが強く出る」ことが特徴です。
まずはレントゲン検査を行いますが、小さい骨が複雑に重なり合った場所にあり、レントゲン検査だけでは診断がつかないことも多く、CTやMRIなどの精密検査をしてはじめて診断がつくこともあります。
突起の根元で折れることが多いのですが、この部分は血流が悪く、また前述のように力学的負荷が多く掛かる場所であることから、治りにくく再骨折もあり得ます。
発症早期であればギプスで治療することも可能ですが、長期固定(6~8週間)が必要になり、骨折が治っても関節が硬くなってしまうリスクがあります。また治りきらずに骨折部で動いた状態が残ってしまうと(偽関節)、痛みが残ったり、不整になった骨折部分で腱が損傷、断裂したり、傍にある神経が損傷して痺(しび)れや痛みが出ることがあります。そのため、手術的治療が選択される場合も多くあります。
骨折部を手術でネジを刺して固定する方法もありますが、スポーツをしておられ早期に復帰を希望される場合、今後も骨折部の負荷が掛かる場合(再骨折の可能性)や、骨折が治りにくいと判断された場合(折れた先の骨片が小さい、折れてから時間が経っている等)は、折れた先(鉤の部分)を摘出する手術を行うこともあります。
疲労骨折の場合、当初はさほど痛みは強くなく運動も継続できますが、無理に続けていると腱や神経の損傷を来したり、かばった手の使い方をすることで他を痛めたりすることがあります。
早期に整形外科に受診していただき、適切に検査、治療を受けて、痛みの無い状態で運動をしていただくことをお勧めします。




