奈良県医師会 赤井靖宏
「シェーグレン症候群」は、唾液(だえき)を作る「唾液腺」や涙を作る「涙腺」が主に傷害される自己免疫疾患です。このため、この病気を持つ方は、唾液が減少することによる「口腔乾燥(ドライマウス)」や涙が減少することによる「眼乾燥(ドライアイ)」をしばしば有します。ただし、ドライマウスやドライアイはシェーグレン症候群以外の病気でも起こり、加齢によってこれらの症状が起こる場合もあります。
シェーグレン症候群の原因ははっきりとはわかっていませんが、免疫をつかさどるT細胞、B細胞や形質細胞が、何らかの原因で唾液腺や涙腺を攻撃するようです。
シェーグレン症候群は50~60歳台に多いとされ、わが国の全国調査では、男女比は1:17.4と女性に多い病気です。シェーグレン症候群には、シェーグレン症候群のみで発症する「一次性シェーグレン症候群」と、他の膠原(こうげん)病を一緒に発症する「二次性シェーグレン症候群」があります。また、唾液腺や涙腺が主な障害部位ですが、肺、肝臓や腎臓など、いろいろな臓器に病変を起こす場合もあります。
シェーグレン症候群の最も多い症状は、前述のようにドライマウスやドライアイです。
唾液が減るとどうなるのでしょうか。私たちは普段は意識していませんが、唾液が減るといろいろと不快な症状が起こります。例えば、短時間で口が乾き何回も水分を摂(と)らないといけない▷水分の少ない食物(例えば食パン)を食べると、ぱさぱさしている感じがして食べにくい▷水分を摂りながらでないと食事ができない▷長時間話をしていると口が乾いてろれつが回りにくくなる-などです。また、唾液が少なくなると虫歯が多くなります。
ドライアイでは、目の不快感が多い症状です。放置しておくと、角膜に傷がつく場合もあります。時に起こるシェーグレン症候群の全身症状では、関節リウマチに似た関節痛、リンパ節の腫(は)れ、皮膚の変化、間質性肺炎、肝炎や腎炎などがあります。
また、この病気では、何とも言えないだるさ(全身倦怠〈けんたい〉感)を訴える方もおられます。
シェーグレン症候群は、「厚生省改訂診断基準」などを参考に診断されます。シェーグレン症候群が重症の場合には指定難病に認定される場合がありますが、この場合にも厚生省改訂診断基準が使われます。詳しくは厚生労働省ホームページなどでご確認ください。
「厚生省改訂診断基準」では、唾液関連検査(唾液量や唾液腺の障害度など)、涙液関連検査(涙の量やドライアイによる障害度など)、生検検査(唾液腺や涙腺の組織を採取して顕微鏡で障害度を確認)や血液検査(自己抗体検査など)を参考に診断がなされます。他の臓器に病変が疑われる場合には、それらの臓器の精密検査が行われます。
残念ながら根本的にこの病気を治す治療が未(いま)だないため、シェーグレン症候群の治療は、ドライマウスやドライアイの症状を抑える治療が主体です。ドライマウスについては、唾液の分泌を促すのみ薬や人工唾液などが使われます。また、ドライアイに対する治療は目薬が主体になりますが、涙の出口に栓をして、目の表面に涙をためる「涙点プラグ」という治療が行われる場合もあります。臓器に障害が出た場合には、グルココルチコイド(ステロイド)や免疫を抑える「免疫抑制薬」が使われる場合もあります。



