奈良県医師会 赤井靖宏
「成人発症スチル病」(以下、スチル病)という病気をご存知ですか。
この病気は全身に「炎症」を起こす病気です。炎症はみなさんにとって大変身近な現象です。例えば、「風邪をひいて熱が出てのどが痛い」場合はのどに炎症が起こっていますし、痛風で足指が痛くなった場合は、足指で炎症が起こって腫(は)れたり痛くなったりしています。つまり炎症があると、赤くなったり(発赤:ほっせき)、熱を持ったり(熱感)、腫れたり(腫脹:しゅちょう)するのです。
スチル病ではこのような炎症が体のあちこちで起こります。中には、心臓障害、肺障害、肝臓障害、関節障害や血球異常など重篤な状態を合併する場合もあります。この病気は一定の条件を満たすと「指定難病」として認められ、医療費補助などを受けることができます。
スチル病が起こりやすい年齢は40歳代ですが、おおよそ20代から70代で発症します。スチル病で最も重要な症状は38.3℃以上の発熱です。熱が出っぱなしでなく、高熱になる時間と熱が下がる時間があることが多いです。熱が出ているときには、ピンクの発疹が出る場合がありますが、熱が下がるとこの発疹も改善します。関節の痛みを訴える方も多く、肩、膝や手の関節などが腫れて痛くなります。首、顎や脇の下などのリンパ節が腫れる場合もあります。スチル病では、初期にはウイルス性の急性疾患(いわゆる、風邪など)と似たような症状が起こりますので、診断が難しい場合があります。
診断は血液検査が参考になる場合が多いです。スチル病は炎症を主体とした病気ですので、炎症反応(CRPなど)が著しく上昇します。ただし、炎症反応は他の病気でも上昇する場合がありますので注意が必要です。また、スチル病では肝臓の数値(ASTやALTなど)が上昇する場合も多いです。スチル病の診断にもっとも有用なのは、血液中の「フェリチン」の値です。スチル病では、フェリチン値が数千、時には数万になることがあります。炎症症状があって、フェリチンの数値が著明に高い場合はスチル病を疑います。
スチル病の原因はよくわかっていませんが、炎症に関連する生体内の物質(サイトカインなど)が病気の発症や悪化に関連しているのではないかと考えられています。
スチル病と診断された場合は、グルココルチコイド(ステロイド)を中心としたお薬で治療が開始されます。グルココルチコイドのみで治療がうまくいかない場合には、免疫を抑える薬(免疫抑制薬)などが併用される場合もあります。最近は、注射薬である「トシリズマブ」がこの病気に使われるようになって注目されています。この薬を使うことによって、グルココルチコイドを早めに減らしたり、病気の勢いを早く抑えたりすることができるようになってきました。
スチル病は多い病気ではありませんが、診断や治療には専門的な知識や経験が必要です。発熱が続いたり、発熱時にピンクの皮疹が出たり、発熱に加えて関節痛や臓器障害がある場合などには、早めに専門施設で診断を受ける必要があります。スチル病に対しては、トシリズマブに加えて新たな治療薬が使えることが予定されています。症状が気になる方は、かかりつけ医を受診し、専門医が在籍する病院に紹介してもらうようにしてください。



