自分の脚で歩く、健康で、楽しく、有意義な人生のために
奈良県医師会 安藤祐之
(吉本整形外科・外科病院)
皆さんは立ち上がる時、階段を昇り降りされる際に膝に痛みを感じることはないでしょうか?周りの方に脚が極端にO脚(おーきゃく)となり、歩行が不安定になっておられる方はいらっしゃらないでしょうか?
膝が痛くてゴルフや散歩が楽しめない、旅行に行けない、、、テレビや雑誌の宣伝でサプリメントが気になる、、、
それは膝の軟骨が摩耗(まもう)し骨が変形する「変形性膝関節症」という疾患の可能性があります。
変形性膝関節症の日本における有病者は3000万人、痛みを抱えながら治療を受けて暮らす人は800万人以上と言われています。介護が必要となる原因疾患に変形性膝関節症などの関節疾患が10.2%を占め、4番目に多い原因となっています。
つまり変形性膝関節症は、皆さんの健康と人生の楽しみを奪う最も身近な疾患の一つであると言えます。
症状が進行した変形性膝関節症には、「人工関節置換術」という手術が1940年代以降、行われてきました。日本では2019年には10万件以上行われ、年々増え続けています。
人工膝関節は、膝関節の痛みとO脚やX脚など極端な脚の変形を同時に改善することで、生活での苦痛を取り除き、歩容(ほよう)や下肢(かし)筋力の改善を目指す手術です。手術は傷んだ大腿(だいたい)骨、脛(けい)骨、膝蓋(しつがい)骨の表面を削り、代わりに金属のインプラントをかぶせます。金属の間にはポリエチレンでできたクッションを挿入します。骨を削る際に何ミリ削るのか?何度の角度で削るのか?それによって、膝の安定性や下肢全体のバランスが決まるため非常に精度の高い技術が求められます。
我々、整形外科医はより安全に、より正確に、より理想に近い人工膝関節の手術を行うために、これまで様々な器具の開発や工夫をしてきました。しかし、最後には医師の視覚や指先の感覚に依る部分があり、熟練の医師でも苦労する手術でした。
そのような中、日本でも2019年より人工膝関節に対し、「ロボット支援下手術」が認められるようになりました。
ロボット支援下による人工膝関節手術は、術前の画像検査と術中に人それぞれの下肢の状態や膝の変形、バランスを正確に把握することで理想的な人工膝関節の設置位置を医師が決めていきます。
その精度は「0.5mm 0.5度」の単位で微調整が可能で、医師により操作されるロボットアームを用いて計画したとおりに正確に骨を削ることができます。骨を削る際にロボットアームの動きは制御されるため従来の手術に比べ安全性も向上し、体への侵襲も小さくすることができます。そのため、早期の退院や早期の社会復帰につながると期待されています。
また、正確に人工膝関節を設置することで、人工関節の耐久性も上がり、長持ちすると言われています。
アメリカでは2020年一年間で行われた人工関節の25%がロボット支援下で行われており、以降も急激な広がりを見せています。
奈良県では、ロボット支援下の人工膝関節手術を受けることができる病院は数カ所に限られているのが現状ですが、世界最先端の手術が身近になってきています。膝の痛みに悩んでおられる方は、近くの整形外科で相談してみてください。



