奈良県医師会 勝井龍平
(斑鳩町・勝井整形外科)
変形性膝関節症は、加齢などによりひざの軟骨がすり減り、痛みや腫(は)れが起こる病気です。進行すると、立ち上がる時や階段の上り下り、歩くことがつらくなり、外出や家事など日常生活にも大きな影響が出てきます。
治療には、大きく分けて「保存療法」と「手術療法」があります。保存療法には、リハビリ、サポーターや足底板などの装具、痛み止めの飲み薬や貼り薬、ヒアルロン酸の関節内注射などがあります。
こうした治療で症状がやわらぐ方も多い一方、十分な効果が得られない場合には、「人工膝関節置換術」などの手術が検討されてきました。
しかし最近では、年齢や持病のため手術が難しい方や、できれば手術は避けたいという方に対して、手術以外の新しい治療の選択肢も広がってきています。その一つが、「末梢(まっしょう)神経ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」です。この治療は、2023年6月から変形性膝関節症に対して保険診療で受けられるようになりました。
末梢神経ラジオ波焼灼療法は、ひざの痛みを伝える神経に熱を加えて、痛みを感じにくくする治療です。超音波診断装置(エコー)で針先の位置を確認しながら行うため、周囲の組織に配慮しつつ、適切な場所に治療を行うことができます。また、針先を冷やしながら処置することで、一定の範囲を安定して治療しやすいとされています。神経を切る治療ではなく、痛みの伝わり方を弱めることを目的としています。
この治療は、ヒアルロン酸注射の効き目が弱くなってきた方▷長く続くひざの痛みに悩んでいる方▷手術はまだ受けたくない方▷高齢や持病のため大きな手術に不安がある方―などに向いています。
入院は必要なく、日帰りで受けることができます。治療時間の目安は片ひざで約30分、両ひざで約60分です。治療当日も歩いて帰宅でき、シャワーも可能です。
期待される効果としては、ひざの痛みの軽減、歩く時の痛みの改善、日常生活の動きやすさの向上などがあります。海外では、半年から2年ほど痛みの軽減が続くとする報告もあります。ただし、効果の出方や続く期間には個人差があり、ひざの変形そのものを治す治療ではありません。
副作用や合併症としては、一時的な痛みや腫れ、内出血などがみられることがあります。ごくまれに感染や局所麻酔薬による副作用が起こる可能性もありますが、適切な管理のもとで行うことが大切です。
変形性膝関節症の治療は、症状の強さや生活の状態、年齢、全身の健康状態などに合わせて選ぶことが重要です。
末梢神経ラジオ波焼灼療法は、保存療法だけでは痛みが十分に改善しない方に対する、新たな治療の選択肢の一つです。ひざの痛みが続き、治療について悩んでおられる方は、一度専門医に相談することが大切です。



