「便潜血陰性」でも安心しないで ―大腸カメラのすすめ―

若い世代にも増える大腸がん

鍵は大腸カメラ

奈良県医師会 横尾貴史

(社会医療法人健生会 土庫病院 消化器・肛門病センター 副センター長)

 最近、芸能人の方が大腸がんを公表されたり、若くして亡くなられたりという報道を目にする機会が増えました。大腸がんは日本人に多いがんで、女性ではがんによる死亡の第1位、男性でも第2位です。一方で大腸がんは、早く見つければ治る可能性が高く、ポリープの段階で取り除けば、がんになる前に防ぐこともできるがんです。

大腸がんは高齢者の病気と思われがちですが、50歳未満で発症する「若年発症大腸がん」が、この20年ほどで多くの国で約2倍に増えたと報告されています。原因はまだはっきりしていませんが、腸内細菌の関わりが注目されています。2026年に大阪大学や国立がん研究センターなどの研究グループが発表した研究では、腸内細菌の一部がつくる「コリバクチン」という物質によるとみられる遺伝子の傷が、日本人の大腸がん(遺伝子変異が特に多いタイプを除く)の約45%に見つかりました。この傷はがんができる過程の早い段階で刻まれており、1960年代以降に生まれた人に多くみられました。まだ研究の段階ですが、「若いから大丈夫」とは言い切れなくなっています。そして、早い段階の大腸がんやポリープには、ほとんど症状がありません。だからこそ、症状のないうちに検査を受けることが大切です。

市町村の大腸がん検診では、便に血が混じっていないかを調べる「便潜血検査」が行われています。手軽で大切な検査ですが、万能ではありません。海外の大規模な研究では、便潜血検査で見つけられたのは大腸がんの7〜8割、がんになる手前の進んだポリープでは約4分の1にとどまりました。陰性でも、大腸がんやポリープが隠れていることがあるのです。また、陽性と言われたのに「痔(じ)のせいだろう」と精密検査を受けない方がいますが、これは一番避けていただきたいことです。

大腸カメラ(大腸内視鏡検査)は、大腸の中を直接見て、ポリープが見つかればその場で切除できる検査です。米国の研究では、大腸カメラでポリープを切除した人は、大腸がんで亡くなる危険が約半分に減っていました。CTなどほかの検査方法もありますが、ポリープを見つけてその場で取り除けるのは大腸カメラだけです。最近は鎮静剤を使い、眠っている間に楽に受けられる施設も増えています。当院の消化器・肛門病センターでは、胃カメラと大腸カメラを合わせて年間1万件以上の内視鏡検査を行っており、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)などの高度な内視鏡治療にも対応しています。手術が必要になった場合も、奈良県で初めて導入した手術支援ロボット「Hugo(ヒューゴ)」による、体への負担の少ない手術を行っています。

胃カメラと同じように、35歳を過ぎたら一度は大腸カメラを受けてみてください。また、便潜血検査で陽性と言われた方、ご家族に大腸がんの方がいる方、血便や便通の変化が続く方は、年齢にかかわらず早めに医療機関に相談しましょう。ご家族に大腸がんの方がいる場合、遺伝だけでなく、同じ食事や好み、生活習慣を共にしていることも関係すると考えられています。大腸がんは「防げるがん」です。その第一歩として、大腸カメラを積極的に受けていただければと思います。